第二十七話:「お母さん大好き、おかあさんありがと 第五章」

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 五月五日、世の中はゴールデンウィークに浮かれているが私たち家族だけが苦しい思いをしているのか。今日はお店も休みなので佐藤君が仙骨に連れて行ってくれる。物凄いひとで待ち時間が長くとても辛そう。こんなのしたってなんにもならんのにとは思うけど、本人が少しでも良くなればと頑張っているのだから・・・。胸が潰れるような思いで待つ。痛みが辛いのか私に当たってくる。

「母さん、ごめんな」

あとで謝ってくる。かわいそうでどうしようもない。代われるものなら替わってあげたいけど。つらい、辛い、つらい。

 五月六日、診察日。夫はとても診察なんかよういかんと泣き言。座薬が無くなったので私が薬をもらいにいった。病院の待合いは相変わらずひとでごった返している。ちょうど待合いの通路を小山田先生が歩いていらっしゃったので声を掛ける。何とか入院させてはもらえないでしょうか。通うのももう限界なんです。痛みもこの座薬ではあまり効かなくなってます。

 小山田先生が仰るには、何でも手術するひとが沢山待っているのでこの病院に入院させることは出来ないとのこと。他の関連病院だったら紹介するということだった。そんな馬鹿なことがあっていいのか。いまここで大学病院に入院できず他の病院へ行けと云われたなら、夫は見捨てられたと思うに違いない。何とかここでお願いできませんかと繰り返し頼んでみたけれど、返ってきたのは一言だけ、「駄目です」。

 あの日、どうやって病院から帰ったのか記憶がありません。気がついたら家の近くの公園のベンチでした。独りで哭いている私を見たご近所の須藤さんが博子を呼んでくれたそうです。博子に小山田先生の話を聞いてもらいました。先生はどんなに懇願しても大学病院には入院させられないの一点張りだった。おまけにこうも言われた。

「だから言ったでしょう。こうなることが判っていたから本人にも告知したほうがいいのだとね。つらいのは一時的なものなんだから」

冷たいものでした。頼るのは病院しかないのに。救えるのは医者しかいないのに。

 手術をしなければいけない人たちが大勢待っているのは判ります。一刻も早く手術しなければ手遅れになるかもしれません。でも治らない患者は見捨てるとでもいうのでしょうか。医療はもっと暖かくあるべきものではないでしょうか。入院を拒否されたなんてとても夫には言えません。どうしたらいいのでしょう。どうしよう、どうしよう、誰か助けて。博子と二人でいつまでも泣いておりました。

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