第三十八話:『高齢者の転倒事故-判例 前編』

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 満九十五歳の女性、要介護2、主たる介護者である次女が入院することになり、介護者不在となったため老人保健施設に入所。

 入所時の評価としては、総合的な援助が必要で、定期的に健康チェックを行う。転倒事故に十分注意を払い、在宅復帰に向けてADLの維持・向上を図る。骨粗鬆症あり、下半身の強化に努め、転倒防止に配慮する。

 排泄に関するケアとしては、日中はトイレに行くが夜間はポータブルトイレ使用となっていた。

 介護マニュアルでは、ポータブルトイレの清掃は朝五時と夕方四時の一日二回に行うことになっていた。実態は、ポータブルトイレが清掃されていない場合には患者は自分で排泄物をトイレに捨てにいったが、容器を洗う場所が無かったので、排泄物の処理と容器の洗浄のために、時折処理場を利用していた。どうにか自分で捨てにいくことが出来たので、介護職員に頼むことは遠慮して、自分で捨てていた。

 事故の顛末の概要は以下の如きである。その日、朝五時にはポータブルトイレの処理がなされた。夕方五時、ポータブルトイレは処理されていなかった。夕食を済ませ自室に戻ったが、ポータブルトイレの排泄物が処理されておらず、夜間もそのまま使用することが不快に感じられ、自分で処理場に運ぼうとした。夕方六時、ポータブルトイレの排泄物が入った容器を持ち、シルバーカーに掴まりながら、自室より約20m離れた詰所裏のトイレまで歩いていった。トイレに排泄物を捨てた後、容器を洗おうと隣りの処理場に入ろうとした。ところがその出入り口に設置してあるコンクリート製の高さ8cmx巾9cmの仕切り(汚物の流出予防の設備)に足を引っかけて転倒。職員が駆け寄ると、「今まで転んだことなんか無かったのに」と悔しそうに云ったという。そのまま救急車で整形外科受診。右大腿骨頸部骨折の診断で入院・手術となった。

 二ヶ月後に退院。事故の結果、手術創痕と軽い右下肢筋力低下の後遺症が残り、独りで歩くことが不自由となった。同時期、施設側の誠意が感じられないとして、患者側は損害賠償(1055万円の請求)の提訴に踏み切った。なお、事故後、要介護3に認定された。

 さて、裁判所の判断はいかに?

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