第三十五話:『最近、いえ細菌の話題』

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IMG_1904.JPG             『スズメウリ』

 

 最近、面白い記事を目にしました。米国生体学会年次集会で発表されたひとと細菌の共生関係にまつわる研究です。その研究はひとの臍に棲む細菌叢を調べたというもの。全米からボランティアを募り、それぞれのひとの臍に棲む細菌のDNAシークエンス(塩基配列)を調べたそうです。

 その結果、ひとの臍には多数の細菌が棲息し、しかも家族内での臍内細菌叢はとてもよく似ているのだそうです。もちろん、研究は未だ端緒についたばかりで、その意味するところなどはよく解ってはいないようです。

 

 よく知られているように、私たちは細菌との共生なくしては生きてはいけません。私たちの身体に棲息するすべての細菌は健康状態下での正常構成物としての一部であり、身体を構成する体細胞数(60兆個)よりの多いおよそ100兆個もの膨大な数の細菌が住み着いているのです。今はまだ何一つ解ってはいませんが、おそらく私たちの臍に共生する細菌叢も何らかの重要な役割を担っていることでしょう。

 細菌との共生が果たす重要な機能は腸内細菌叢についてはよく認識されております。私たちの腸内には数100種類、100兆個もの細菌が棲息し、腸内細菌叢の全重量は実に1.5kgにもなるそうです。糞便の半分は腸内細菌由来であり、糞便1gあたり10億から1000億個もの腸内細菌を含むのです。腸内細菌のうち、善玉菌の代表はよく知られている乳酸菌、悪玉菌の代表は食中毒や腸管出血性大腸炎などでよく知られた大腸菌、ウェルシュ菌、サルモネラ菌などが挙げられます。これ以外にも日和見菌と呼ばれるグループもあります。普段は善玉・悪玉のどちらにも属さず、何か事あるときには、善玉菌についたり、あるいは悪玉菌についたりと、まるで風見鶏そのもののグループもあります。面白いですね。

 腸内細菌叢の構成は哺乳類相互で大きく異なりますし、同種間でも個体差が大きいようです。腸内細菌の重要な働きとしては、食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を合成すること、これは牛や馬などの草食動物には特に重要な機能です。新生児黄疸の予防に欠かせぬビタミンKの合成にも腸内細菌は重要な役割を担っております。また酸素運搬に重要なヘム蛋白の分解物であるビリルビンの代謝にも腸内細菌叢は欠くべからざる存在です。勿論、正常な腸内環境の維持にも一定のパターンを保った腸内細菌叢(フローラ)の維持がとても重要です。

 それこそ無菌ではひとは生きられないのです。最近、巷に氾濫する無菌グッズなんて筍から見たら論外。また、公園の砂場遊びさえさせぬような若いお母ちゃんがたが多いとも聞きます。100兆個もの細菌と共生する我身をも知らず、我が子には無菌環境を強いるなんてどうなんでしょうか。 

 出すにやむなく出てきたものを時にはじっくり眺めて感謝されては如何でしょうか。また、ときには皆様の臍のごまの護摩供養なんぞは如何ですかな。

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