第百六十八話:『生きとし生けるもの』

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全ての生きとし生けるものは、突き詰めればたんなる原子の集合体に過ぎません。たかだか、炭素、水素、窒素、酸素の四つが主たる元素で、あとは、鉄、銅、亜鉛、燐、硫黄などが僅かに含まれるだけ。でもこれらの原子の集合体は、絶妙かつ摩訶不思議な有機体でもあります。神が創り賜うたと考える他は無いようにさえ思われます。

生きとし生けるものはやがて必ず死を迎えます。例外はありません。避けられるものではありません。ですが、死は消滅ではありません。有機的に集合していた原子たちが、それぞれにこの広い世界に解き放たれるだけのこと。あるものは爽やかな風に乗って天空を吹き渡り、またあるものは清らかなせせらぎとなって、やがて大海原を自由に漂うのです。

死は厭うべきものでも恐れるべきものでもありません。

死は受容すべき必須のこと。輪廻の歯車がほんのコトリと動いただけのこと。死を契機として空へと昇華した原子は、やがて一粒一粒の雨滴となって大地に注がれ、草木が芽吹き、葉を茂らせ、花となり実となり、虫や鳥や獣たちを育み、終には選ばれしほんの一握りの原子たちが、私たち人間を形成するに至るのです。

ひとは感じ、考え、悩み、苦しみ、時には笑い、時に涙しつつ、やがて、その命の終わりを迎えます。そして、また空へと昇華し、永遠の輪廻を繰り返すのです。

昨日から続く今日を懸命に生き抜き、今日から続くあしたを悠然と迎える。

これが人生の本質。

死ぬるときが来れば死ぬるが良い。

死を恐れる必要などないのです。

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