第百四十六話:『為し難きこと 病診連携 その壱』

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数日前の診察室、ある患者さんを耳鼻科へ紹介しようとしたときの会話。患者さん、筍に面と向かって、曰く、「そうですよね、病院の耳鼻科のほうがやっぱりいいですよね、町医者よりは信頼感があるもの。

その患者さん、すぐにご自分の迂闊さに気付かれたようで、極めてばつの悪そうな顔をなさいました。ご自分のすぐ目の前にも、ひとりの町医者がいることに初めて気付かれたようなのです。

でも殆どの患者さんはそうなのですよね。

病院の勤務医はそれぞれの病院の看板をバックに医療に携わっている。治療内容も、明らかに2次医療、3次医療となるにつれ違ってくる。癌とか難病とか、特定の限られた疾患だけを対象に高度医療を実践しておられる。じつに偉い先生方ばかりです。

これに対して町医者は、煤けた小ちゃな診療所で、精精が、風邪や、魚の目や、腹痛を診るだけ。誠にしがないプライマリー・ケア・ドクターなのです。すぐに診てもらえて、薬をちょこっと貰って、それで治れば良し。治らなければまた次の医者にかかれば良いだけのこと。

勤務医と開業医、医者のレベルとしてはおのずから優劣明らかです。信頼感がまるで違います。病院が大きければ大きいだけ、有名であれば有名であるだけ、そこで働く先生方はより偉く見える、いや実際、偉いのです。しがない町医者が太刀打ちできるはずもないのです。

でもねえ、全ての町医者はその昔、みんな勤務医として大病院に勤めていたのです。医者になった当初から、開業医なんてひとはいないのです。大きな病院で何年も修練を積んで、先輩ドクターに揉まれ、患者さんに育ててもらい、そのうえで、想うところあって、開業を決心するのです。

全ての患者さんが何か事有る毎に大病院へ押し掛けては大変です。大病院が本来持つべき高度先進医療の業務が滞ってしまいます。プライマリー・ケア・ドクターが先ずは診療して、町医者が治すべき疾患は治し、専門的医療が必要なひとを選別し、適宜、大病院へ誘導する。そんな棲み分けがもっとなされるべきです。

「病診連携」という言葉、皆さん聞かれたことがおありかと思います。病院と診療所がもっと密接な連携を構築して、より合理的かつ効率的な医療サービスを提供しようとするものです。診療所から病院への紹介、逆に病院から診療所への紹介、現状は未だとても十分なものとは云い難い状況にあります。

病診連携を阻むもの、そのひとつが町医者に対する患者さん側の信頼性の低さです。

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