第八十五話:『茨木のり子さんに捧ぐ;友人』

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 「友人」     茨木のり子

   友人に

   多くを期待しなかったら

   裏切られた!と叫ぶこともない

   なくて もともと

   一人か二人あらば秀

   十人もいたらたっぷりすぎるくらいである

   たまに会って うっふっふと笑いあえたら

   それで法外の喜び

   遠く住み 会ったこともないのに

   ちかちか瞬きあう心の通い路などもあったりする

   ひんぴんと会って

   くだらなさを曝け出せるのも悪くない

   縛られるのは厭だが

   縛るのは尚 厭だ

   去らば 去れ

   ランボウとヴェルレーヌの友情など

   忌避すべき悪例だ

   ゴッホとゴーギャンのもうとましい

   明朝 意あらば 琴を抱いてきたれ

   でゆきたいが

   老若男女おしなべて女学生なみの友情で

   へんな幻影にとりつかれている

   昔の友も遠く去れば知らぬ昔と異ならず

   四月のすかんぽの花 人ちりぢりの眺め

   とは

   誰のうたであったか

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