皆様、明けまして御目出度う御座います。「平成最後の…」という枕詞はもう耳に胼胝ができるほど。さりながら、今年4月1日には新元号が発表される予定とか。明治、大正、昭和、平成に続く新元号が果たしていかなるものとなるか興味津々ではあります。まさかエイプリルフールはないですよね。

 新年三ケ日は如何お過ごしでしたでしょうか。お健やかにお過ごしになられましたでしょうか。筍は毎朝の日課である柴の雌犬ひなたとの散歩を、年が明けても変わらずこなしております。このところまだ暗いうちに家を出ると、東の空には下弦の月、その上には明けの明星、その横には木星が見えております。暫し見上げること数瞬にして心がすっと落ち着きます。悠久を感じることの効用がここにあります。

 さて、昨年暮れのことでした。小学生の男児が腹痛で当院を受診しました。腹部の触診ですぐに判断がつきました。腹膜炎です。すぐに緊急手術が必要な状態です。前医では胃腸かぜとの診断で、整腸剤を投与されていたようですが、腹痛が次第に強くなり我慢できなくなっての受診でした。かなり痛そうでした。

その子が筍に聞くのです。

「僕、死んじゃうの?」

「大丈夫だよ、今から大きな病院へ行って治療を受ければ良くなるから」

「手術するの?」

「手術しないと治せない病気のようだから頑張って手術をすることだね」

 表情が少し和らいだように見えました。納得できたのでしょう、きっと。  この僅か二言、三言の男の子との会話で筍の心もすっかり和みました。このところ、患者さんと医師との心の交流:信頼感の醸成が、だんだん廃れてきているではないかとの懸念を持っていたからです。不信感いっぱいの患者さんに出くわすこともしばしばです。自分の判断を曲げない患者さんも多いのです。医者の言ってることをまるで聞かず、自己に都合の良いように解釈を変えて、内服さえ気ままに調整する患者さんがなんと多いことか。その点、この子には全幅の信頼が感じられます。

 彼が寄せてくれた吾への信頼は吾に力を与えてくれました。

『患者さんとの信頼感の醸成を通して、心の通い合う医療を提供すること』

己亥の年頭の誓いとして、この言葉を選びます。

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