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 筍の大好きな現代詩人のお一人、茨木のり子さんの詩を二編、皆様にも読んでもらいたくて、無断掲載します。お許しあれ。

「自分の感受性くらい」    茨木のり子

 ぱさぱさに乾いていく心を

 ひとのせいにはするな

 みずから水やりを怠っておいて

 気難しくなってきたのを

 友人のせいにはするな

 しなやかさを失ったのはどちらなのか

 苛立つのを

 近親のせいにはするな

 なにもかも下手だったのはわたくし

 初心消えかかるのを

 暮らしのせいにはするな

 そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 駄目なことの一切を

 時代のせいにはするな

 わずかに光る尊厳の放棄

 自分の感受性くらい

 自分で守れ

 ばかものよ

          茨木のり子著 「じぶんの感受性くらい」 花神社

「倚りかからず」       茨木のり子

 もはや

 できあいの思想には倚りかかりたくない

 もはや

 できあいの宗教には倚りかかりたくない

 もはや

 できあいの学問には倚りかかりたくない

 もはや

 いかなる権威にも倚りかかりたくはない

 ながく生きて

 心底学んだのはそれくらい

 じぶんの耳目

 じぶんの二本足のみで立っていて

 なに不都合のことやある

 倚りかかるとすれば

 それは

 いすの背もたれだけ

          茨木のり子著 「倚りかからず」 筑摩書房

  1. 2013年10月31日

    拝見させていただきました。
    我こそ恥ずかしながら ばかものです。
    ご高齢の方々とお話させていただく機会が多々ありますが、以前、「どうしたら人は悟りを抱けれるんでしょうか?」と尋ねたことがあります。
    「浅はかな質問だね」と優しく笑われました。
    はい。ばかものです。
    自分がばかもので「凄く嫌だ」というわけではありませんが…。
    本当に欲しいものはお金では買えないものばかりです。

    • 2013年11月1日

      星降る村の下っ端さん
       茨木のり子さん、本当に素晴らしい詩人です。亡くなられたときも、ご自宅で独りで亡くなられていたのですよね。もっともっと長生きされて、素晴らしい詩を沢山作って欲しかった。自立した人間、こうならなければと筍はいつも自戒しております。

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