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数年前から、「やがて抗生物質が効かない時代が到来する」と、世界保健機構(WHO)が警鐘を鳴らしています。あらゆる抗生物質が効かない多剤耐性菌が世界規模で拡大しているのです。

 

ポリミキシンに耐性をもたらす遺伝子:mcr-1が、中国の科学者によって特定されました。The Lancet Infectious Diseases:11月18日付に報告された論文です。著者は、華南農業大学(中国;広州)のJian-Hua Liu教授。

 

ポリミキシン(コリスチン及びポリミキシンB)はその耐性が細菌から細菌へと伝播されない、まさに“最後の砦”とも呼ぶべき抗生物質クラスでした。これまで見つかっていたコリスチン耐性は染色体変異によるもので、細菌間を移行できるものではなかったのですが、今回報告された新たな遺伝子:mcr-1は、プラスミド上に存在し、容易にコピーされて細菌間を移行できます。

 

Liu教授は、「この遺伝子の存在は、異なる種類の細菌に伝播しやすい多剤耐性遺伝子の出現を示すものだ」と警告しています。この新たな耐性遺伝子の発生を促した原因は抗生物質の大量使用です。コリスチンは、中国では何の規制もなしに、広く家畜に使用されており、この耐性がブタからヒトへと伝播したと考えられています。mcr-1の出現は最後の抗生物質群が突破される前兆とも呼ぶべき忌まわしい最悪の事態です。現在は中国のみのようですが、いずれ世界中に広がる懸念があります。

 

コリスチンは他の手段をすべて使い尽くした多剤耐性菌に対する最後の選択肢です。コリスチンを温存するためには家畜飼料への闇雲な抗生物質の使用を厳しく制限し、家畜に定着する最近の耐性獲得をできうる限り阻止すべきです。

 

重篤な感染症患者に、医師が為す術もなかった時代へと逆戻りすることだけは、何とか回避したいものです。

 

医療者も、患者も、無闇に抗生物質を濫用することのないようにしたいものですね。

 

 


 

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