第百三話:『生まれ落ちたる幸せ』 いまでは遠い昔の如月の二十日余り四日、時折雪が舞い来る寒い寒い晩だったそうな。遠く近江の伊吹山を越えて吹きつのる空っ風が、板戸をぴしぴしごとごと鳴らす夜更けのこと。 夕餉の団欒も終わり、皆がそろそろ寝間の布団に潜り込…Category生きる哲学Love it 0