予防接種Q&A

 

 

予防接種は受けないといけないの?

・『予防接種法』に基づき実施する定期の予防接種には、保護者は子どもに受けさせるよう努めなければならないという努力義務があります。

・予防接種は、感染症(ウイルスや細菌によって引き起こされる病気)を予防するために、ワクチンを接種することで免疫(病気に対する抵抗力)を獲得するものです。

・かつて多くの幼い命を奪ってきた恐ろしい病気(ポリオ、はしか、破傷風、百日せき、日本脳炎など)から子どもたちが守られているのは、予防接種の普及によるものです。

予防接種を受ければその病気にかからないの?

・予防接種をすれば、接種した多くの人がその疾病に対する免疫を獲得します。

・予防効果はワクチンの種類や個人によって異なりますので、免疫を獲得できなかった人は予防接種後もその疾病に罹患する可能性があります。しかし、感染しても重症化するのを予防できる場合もあり、また自然感染した場合に比べて症状が軽く済むという利点もあります。

・予防接種が大切な理由は3つ。1.自分がかからないために。2.もしかかっても症状が軽くてすむために。3.まわりの人にうつさない(自分のまわりの大切な人たちを守る)ために。

自然に感染した方が免疫がつくの?

・自然感染は確かに強い免疫が獲得できますが、一方で、合併症や後遺症になるリスクは高いです。

例えば「おたふくかぜ」は、自然感染した場合、1~10%の人が無菌性髄膜炎になり、さらに数百人~数千人に1人は難聴になる恐れがあります。しかし、予防接種を受けた場合は、予防接種の副反応によって合併症になるリスクは自然感染の約100分の1に減ります。また、予防接種で難聴になったという報告はほとんどありません。つまりこの場合、自然感染の方が、合併症や後遺症になるリスクが100倍以上も高くなるのです。

・予防接種をしなかったことで、長期間保育所や幼稚園を休み保護者にも大きな負担がかかった、耳が聞こえなくなった、気管切開し1カ月入院した、脳萎縮と水頭症になった、治療の甲斐亡くなくなった、などの報告もあります。

・妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんに重大な影響が出ることがあります。例えば「風疹」は、目が見えない、耳が聞こえない、心臓の壁に穴が開いている等の障害を持った子が生まれたりします。

・「ワクチンさえ接種していれば、こんなことにはならなったのに・・・」こんな思いをしない為にも予防接種は大切です。          

流行期にその予防接種は受けた方がいい?

・まだ病気に未感染なのか、すでに感染して潜伏期間中なのか、感染したが発症しなかった(症状が出なかった)のかによって対応が違います。かかりつけの医師に相談してください。

・ワクチン接種する前には抗体検査をして、抗体がなければワクチン接種をしましょう。

発症者と接触した場合は予防接種を受けてもいいの?
・患者さんとの接触の度合いをよく聞いて、明らかに潜伏期間中であると思われる場合は接種を控えます。かかりつけの医師に相談してください。
副反応が怖い・・・

・予防接種の後の副反応としては、熱が出たり、きげんが悪くなったり、接種部位がはれたり、しこりがでたりすることがありますが、その頻度は高くはなく、そのほとんどは数日以内で自然になおります。

・「副反応がこわいから予防接種を受けたくない」と思っている人がいるようですが、重度の副反応はまれで、副反応のほとんどが一時的な症状です。感染症にかかったリスクに比べると軽くすみます。

もし、予防接種の副反応を疑う症状がでた場合は、接種した医師に相談してください。

「定期接種」と「任意接種」の違いは?

・定期接種は『予防接種法』に基づいて行われ、対象年齢のうちに受ければ接種費用はほとんどの場合は無料です。一方、任意接種は個人が希望して受けるもので、基本的に費用は自己負担です。

・予防接種の重要性としては全く差はありませんので「定期接種」と「任意接種」と区別せずに、必要なワクチンはすべて受けましょう。予防接種で子どもを感染症から守れる確率が高くなります。

「同時接種」と「混合ワクチン」の違いは?

・同時接種は、単独ワクチンを2.5cm以上離れた場所に、1本ずつ接種します。効果や安全性は単独で接種した場合と変わりません。

・混合ワクチンは、複数のワクチンがはじめから1本の注射液に混合して含まれているもので、注射の回数を減らして子どもたちの負担を少なくすることができます。

・日本では四種混合(DPT-IPV)、MRなどが混合ワクチンです。いまも世界中で研究を重ねて混合ワクチンの開発が続けられています。

・単独ワクチンを混ぜで接種することはできないため、今は同時接種で行うしかありません。

・ワクチンの大部分は皮下接種ですが、筋肉接種(HPV、コロナ)、経口接種(ロタ)、経皮接種(BCG)をするワクチンもあります。

「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の違いは?

・生ワクチンは、毒性を弱めて病原性をなくした(弱いけど生きている)細菌・ウイルスをそのまま原材料としてワクチンにしています。

一方不活化ワクチンは、毒性や感染力を失った(不活化、殺菌した)細菌・ウイルスを原材料として作られています。そのため自然感染や生ワクチンに比べ抗体産生力が弱く何回か追加接種が必要です。

予防接種を受ける順番は?

・ワクチンごとに接種年齢が決められています。通常は、生後2か月からです。病気になる前に予防することがワクチンの目的なので、接種できる月齢になったらなるべく早く受けましょう。

・「同時接種(1回に複数のワクチンを同時に接種)」で、効率の良いスケジュールを組むことができます。かかりつけの医師または保健センターに相談しましょう。体調不良などで、スケジュール通りに受けられなかった場合は、医療機関で早めに再調整をして接種しましょう。

予防接種を受け忘れた場合は?

・気付いた時点で早めにかかりつけ医師に相談しましょう。複数回接種が必要なもので、前回接種から間隔が空いてしまった場合でも、規定の回数を接種すれば効果が期待できるため最初から接種し直す必要はありません。なお、定期接種の対象年齢を超えた場合は、接種費用は自己負担(自費)になります。

接種当日の体調がよくない場合は?

・予防接種は体調の良い時に行う方がよいのは言うまでもないことです。体調が少々すぐれない場合は、予防接種の安全性や効果自体に変わりはありませんが、接種前に必ず医師に相談してください。

予防接種前後に注意することは?

・接種前にはアルコール綿で接種部位を消毒します。アルコール消毒で皮膚が赤くなったりする方は必ず申し出てください。代替品を準備してありますのでそちらを使って消毒します。

・接種後の重大な副反応として「アナフィラキシー」があります。アナフィラキシーは接種後30分以内に起こることが多い為、その間は子どもの様子に注意し、異変があればすぐ医師に伝えましょう。

・接種後に何か気になる症状が出現した場合は、すべてが副反応とは限りませんが、速やかに接種した医師またはかかりつけ医の診察を受けてください。

・ワクチンを接種して数日から1週間くらい経ってから腕にかゆみや腫れ、痛みなどが出る場合があります。ワクチンの副反応であれば数日で自然に治ります。数日経過しても軽快しない場合は医師にご相談ください。

・注射した部位は揉む必要はありません。また当日の入浴は差し支えありませんが、接種部位を強くこすることは控えましょう。激しい運動や過度の飲酒も控えましょう。

・ワクチン接種後の絆創膏は、まれにいつまでも貼っている人を見かけますが、血が止まっていたら剥がしましょう。

食物アレルギーがあるが予防接種を受けてもいい?

・食物アレルギーがあるからと言って、予防接種ができないということは基本的にありません。

とくに話題になるのは、卵アレルギーの方ですが、単に軽度の卵アレルギーというだけでは、接種を避ける必要性はないと考えます。

アレルギー疾患(アトピーやぜんそくなど)があるがあるが予防接種を受けてもいい?

・ワクチンの成分によって、アナフィラキシー誘発を予知する確実な手段はありません、よってアナフィラキシーを起こしたことが明らかな人は接種できません。

・アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー体質があるだけの場合は通常接種可能ですが、強く不安を持たれる方は接種要注意者の対応に準じて慎重な観察と緊急時の体制を整えた上で接種します。

妊娠中や授乳中の女性は予防接種を受けてもいい?

・妊婦への生ワクチン(MR、水痘、おたふく等)は、胎児への影響を考慮して接種はできません。妊婦に接触する可能性のある方へは接種しても心配ありません。

・不活化ワクチン、トキソイドの接種は胎児に影響するとは考えられないので接種可能です。

・接種を受けていない方が自然感染を受け、そこから妊婦が感染を受けるリスクの方が高いと考えられます。そのため、インフルエンザ予防接種は接種が推奨されています(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)

・授乳中の女性の予防接種は、明確なデータはないものの、仮に母乳中にワクチン成分が分泌されてもごく微量であり乳児に与える影響はないと考えられています。

イベント前予防接種・海外渡航前予防接種

・人生の節目(入学、就職、結婚、妊娠、出産、孫が生まれた など)で予防接種を受けているか振り返ってみましょう。もし接種していない予防接種がある場合は医師に相談してください。

また、手術前の予防接種は主治医に相談してください。予防接種を受けることで手術が一定期間できなくなります。

・海外渡航前には予防接種が必要です。渡航先により必要な予防接種が異なります。数回必要な予防接種もありますので早めに準備しましょう。

免疫不全と診断されたことがありますか?

予防接種の予診票を記入する際、「免疫不全と診断されたことがありますか?」「近親者に先天性免疫不全症の方がいますか?」という質問事項で免疫不全?と思われた方も多いと思います。

免疫不全とは、免疫が正常に機能しなくなった結果、身体の防御力が低下した状態です。体内に侵入したウイルスや細菌を追い出すことができなくなるため感染症にかかりやすくなります。また、病気が長引いたり再発したり、合併症を併発し重症化しやすくなります。

免疫不全疾患には原発性(遺伝性)と続発性があり、原発性免疫不全症には100種類を超える病気があります。

日本の子供が接種できるワクチンと防げる病気は?

日本でもまだ毎年多くの人が、以下のワクチンで予防できるはずの病気(VPD)に感染して苦しんだり、後遺症を持ったり、死亡したりしています。

日本の子どもが接種できるワクチン防げる病気(VPD)
B型肝炎ワクチンB型肝炎(肝臓がん)
ロタウイルスワクチンロタウイルス感染症 (胃腸炎)
ヒブワクチン細菌性髄膜炎などのヒブ感染症
小児用肺炎球菌ワクチン細菌性髄膜炎などの肺炎球菌感染症
四種混合ワクチンジフテリア / 百日せき / 破傷風 / ポリオ
BCGワクチン結核
MR(麻しん風しん混合)ワクチン麻しん(はしか) / 風しん
水痘(みずぼうそう)ワクチン水痘(みずぼうそう)
日本脳炎ワクチン日本脳炎
HPVワクチンヒトパピローマウイルス感染症
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンおたふくかぜ(流行性耳下膜炎)
新型コロナワクチン新型コロナウイルス感染症
インフルエンザワクチンインフルエンザ
髄膜炎菌ワクチン髄膜炎菌感染症
A型肝炎ワクチンA型肝炎

・世界中には、とてもたくさんの感染症が存在します。

マラリヤやデング熱のように、ワクチンがないために有効な予防ができず、年間何十万、何百万という人の命を奪っている感染症も少なくありません。

そんな中で、VPD(予防接種で防げる病気)は大変少数です。せっかくワクチンがあっても、接種しなければ予防はできません。予防できる病気なのに、防がない。こんなにもったいないことはありません!

・世界中のみんながなぜ痛い思いをして予防接種を受け、VPDがなくなることを願っているのか、考えてみてください。かかると今でも治療が難しくて、命にかかわる病気だからこそ、ワクチンが作られたのです。

・VPDはワクチンで防ぐべき病気なのです。失った命や健康は戻ってきません。予防接種で防げる病気は予防しましょう。