「Choosing Wisely運動」をご存知ですか?米国内科専門医認定機構財団(ABIM)によって、2011年頃から全米で始められた医療キャンペーンです。このキャンペーンは現在までに全米の71医学会が参加する大掛かりで広範な運動となっています。医療界が率先して、無駄な医療の提供を今一度再考しようとするもの、さすがアメリカ医学会ですね。
賢く選ぶ:Choosing Wisely、曰く、
肺癌のCT検査はほとんど無意味(米国胸部学会)
大腸内視鏡検査は10年に一度で十分(米国消化器病学会)
6週間以内の腰痛には画像診断をしても無駄(米国家庭医学会)
精神疾患ではない若年者に「先ず薬」で対応しては駄目(米国精神医学会)
危険な兆候のない腰痛は発症から6週間まではX線撮影は不要(米国家庭医学会)
自覚症状のない低リスクの患者に毎年の心電図検査やその他の心臓検査は不要(米国家庭医学会)
4歳以下の子供の風邪に薬を使っては駄目(米国小児科学会)
自覚症状のない成人の定期健康診断は不要(米国内科学会)
平均余命10年以下の成人のがん検診は不要(米国内科学会)
ウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎)に対して抗生物質の投与は駄目(米国小児科学会)
頭部の軽い外傷に対してCT撮影は不要(米国小児科学会)
子供の単純な熱性痙攣にCTやMRIなどの神経画像撮影は不要(米国小児科学会)
重度認知症患者に胃瘻や径鼻胃管などの経管栄養を不要;代替として経口栄養摂取補助を(米国老年医学会)
65歳以上の高齢者に対してはHbA1cの7.5%未満を達成するための投薬は控え、適度な管理でよい(米国老年医学会)
頭痛に対し脳波測定は不要(米国神経学会)
無症状の平均余命の少ない患者へのルーチン的がん検査は不要(米国腎臓学会)
高血圧・心臓病・慢性腎臓病(CKD、糖尿病を含む)の患者に対しNSAIDsの処方は避けるべき(米国腎臓学会)
如何でしょうか?皆さんはどうお感じになられますでしょうか?数パーセントしか有効性がない医療はもう止めますか?
ここで示された提言は、有効性が乏しい医療に対してはもはや医療費をつぎ込んでも無駄だとのアメリカさんらしい合理性に基づくものです。
ですが数パーセントとはいえ、その僅かな有効性をカットすれば、間違いなく万全の医療とはなり得ません。アメリカのように“個”の自立がしっかりしている国ならまだしも、「先生がいいと考える治療をして下さい」など、医者へ丸投げの医療に慣れた日本でこれが導入されるとなると、さてさてどのような事態が引き起こされるのでしょうか。
勿論、医療費の無駄な削減は、日本が抱える財政再建における喫緊の主要課題であります。
筍自身、従来から日本の医療は果たしてこれでよいのかと痛切に感じております。日本には無駄な医療が多過ぎるのです。なんとかしなければとも思っておりました。(続きは次稿に)
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