
訪れる度毎に合掌して迎えて下さる
寝たきりの老婆の眼には仏が宿る
往診をさせて頂く二人の婆の眼
それぞれに違った人生を歩んできたその眼に
寸分違わぬ気配が静かに息衝く
深く窪んだ眼窩の奥に確かに存在するもの
それは諦念と呼ばれるもの
またそれは悟道とも呼ばれるべきもの
米寿卒寿の来し方を日がな一日寝たきりで
来る日も来る日も反芻し見極める
もはやそこにはいささかの欲心も邪念もない
あるのはただ「空」だけ
他には何もない
筍亭 作
『寝たきりの 老婆の目線 たおやかに 治せぬ吾を 癒し賜いぬ』 筍亭
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