四月四日、病院玄関へと続く桜並木が満開です。お花見だけに来られる家族や老夫婦が羨ましい限りです。最近、小山田先生から詳しい病状の説明がないので少し不安です。何となく先生の診察がおざなりな感じがするのは私の…

 術後経過はそれは順調だった。御飯も美味しく食べてくれた。 「なんでお父さんだけこんなに食べられるのかな。ほんまに胃とったんか」 何度も尋ねられた。その度に凄く辛かったけど嘘をつきとおした。 お父さんが昨年から楽しみにし…

          『庭の花梨』    一時間が過ぎ、二時間が過ぎた。そろそろ三時間が経とうかという頃、遠く病院ロビーの海鳴りの如き喧噪も静まり、それに変わるように病棟廊下を配膳車が慌ただしく運び込まれる。私た…

             「秋来たりなば冬遠からじ」    木枯らしが吹き荒ぶとても寒い日。確かにあの日は、何か良からぬことが起きそうな妙な胸騒ぎを覚えてた。朝からどんよりと曇り、…

             『バイカウツギ』     「夕鶴」のおつう役で一世を風靡した山本安英さんをご存知でしょうか。  新劇の大女優でした。20年前の今月20日が命日です。  あのかたの言葉にこんな…

         筍農園:無花果     数日前の時間外でのこと。ひとりの爺様が待ち合いの椅子にも座らず、なんとなく、そわそわ、うろうろと、落ち着かぬご様子。何となく顔色も青ざめ、時折痛そうに顔を歪め…

               零余子(むかご)   かたち醜けれども知らず 心の愚かなるをも知らず 芸の拙きをも知らず 身の数ならぬをも知らず 年の老いたるをも知らず 病の冒すをも知らず 死の近きことをも知らず…

   蟻のごとくに集まりて 東西に急ぎ南北に走る  高きあり 賎しきあり  老いたるあり 若きあり  行く所あり 帰る家あり  夕べに寝て 朝に起く  いとなむ所 何事ぞや  生をむさぼり 利を求めて止むときな…

 またまたある日、都の役人がやってきて云うのです。 「こんなに狸口が減ってしまっては仕方ない。隣のこんこん山と合併して公務狸と公務狐を減らすのじゃ。金のかかりを減らさんことには橋も作ってはやれんぞよ」 ぽんこつ山の長狸と…

 昔々のお話です。山越え、山こえ、もひとつ山越えた奥の奥、ぽんこつ山のお話です。へんぴで、辺鄙で、へんぴなところ。おっとう山を源に、おっかあ山とせがれ山、まごまご山の岩肌を削り、ぽんこつ山の山裾を縫うように、澄み切った神…

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