第百十話:『独り言のてっつぁん その弐』

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黄砂に煙る穏やかな春の朝、再び、てっつぁんの登場です。今日は胃透視のための再診、お腹の具合がどうも芳しくないようです。正月の納豆の祟りかもしれません。

「調子はどう?起きてからなんも口にはしとらんだろうね」

「言われた通り、ちゃんと水もお茶も飯も食っとらん。俺は言われた事はちゃんとやるで。そのかわり、昨日の晩はどんぶり三杯も飯喰うたった。朝、なんも喰えんちゅうでな」

「そう、そんならええ。そうそう、ところで今朝はお通じは出たかい?あっ、そう、でたの。便の色はどうやった?黒くはなかったかい?」

「ええ色だった。ちゃんと黄色いええうんこがな。でもこの前、いっぺんだけ黒かったわ。アスファルトみたいな色しとったで」

「そうか、そのあとは大丈夫だったか。じゃあ、今からバリウムの検査するからね。肩に注射してもらったらレントゲン室の前で待ってて」

てっつぁんをTV透視室に呼び込んで、いよいよ胃透視の開始です。

「はい、じゃあ始めようか。先ず、斜め左向いて。いやそれは右でしょ、反対向いて、反対。そうそう、そっちが左だよね。大丈夫だよね。ではね、台の上のバリウムを取って、一口だけ口に含んで、いや、まだ飲まない。えっ、もう飲んじゃったの。こっちが飲んでっていってから飲んでよね。はい、じゃあ、もう一回おんなじことするからね。口に含むだけだよ、飲んじゃ駄目。さっきと同じ格好して、左半身になってえ。はい、飲み込んで。動かない、動かない、動いちゃ駄目だよ。はい、じゃあ今度は正面向いて、いや、そっちじゃない、反対向き。そうそう台が倒れていくからね、台に凭れといてよ、背中しっかりと台につけといてね」

てっつぁん、仰向けに寝ております。

「はい、じゃあね、今度はまた左向いて、いや、いや違う。頭だけじゃない、身体全体を左横向きにして。そうそう、そのままうつ伏せになって。いや違う、違う、それは仰向け。腹這いだよ、腹這い。お腹を下にするの。そう、そう、そうだ、そうだ」

てっつぁん、どうやら至極緊張しているのか、全く指示通りには動いてくれません。

「はい、そのまま息を止めて。息を止める、息をしない、息せんといて!呼吸を止める。息したらあかん。はい、今度はまた左から仰向けになって。いや、違う、違う、そっちは右でしょ。まあいいわ、仰向けね。上向いて寝といて」

まあ、随分手間取りました。

大変でした。

もう疲れちまいました。

続きはまた明日ということで・・・。

 

 

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