第二百四十話:『蜜柑を食し想う』

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碌に手入れもできていない小さな蜜柑畑があります。それでも毎年のように蜜柑や八朔が実をつけてくれます。先日取り遅れの蜜柑や八朔を収穫してきました。時に贈答品として頂くブランド品の蜜柑の足元にも及ばない代物ですが、小さな頃から食べ慣れている少々酸っぱめの味が筍にはお気に入りです。有田や三ヶ日など、どこのどんな蜜柑よりも美味しく感じられるのです。

 

少々ごつごつした外皮を剥き、凍てついた蜜柑を食しながら頭に浮かんだ言葉が「常世の国」。常世の国は日本の古代人が海の向こうにあると信じた不老不死の理想郷。常世の国には「非時(ときじく)の香果(かぐのみ)」が取れるのだと、古事記や日本書記にあります。非時の香果とは、いつもかぐわしい香りを放つ果実という意味です。垂仁天皇の命で常世へ赴き、この果実を持ち帰ったのが、お菓子の神様とされている田道間守(たじまもり)という人物。果実は「橘」と呼ばれたのですが、実は今の紀州蜜柑のことだそうな。

 

冬にも黄金色の実と緑の葉をもつ柑橘類は、きっと太陽の恵みの象徴、そして不老長寿をもたらす霊力を古代人は信じたのでしょうね。正月飾りや鏡餅に添えられるのも道理です。紫宸殿には左近の桜に右近の橘が有名。また、「おんな城主直虎」で有名となった井伊家の家紋は橘紋です。

 

白樺派の歌人木下利玄の有名な歌にこんなのがあります。

「街をゆき 子供の傍を通る時 蜜柑の香せり 冬がまた来る」

 

医師で歌人の西東三鬼の句

「からかさを 山の蜜柑が とんと打つ」

 

蜜柑の季語は冬です。蜜柑の花の季語は夏、青みかんは秋の季語。花言葉は「清純」、「花嫁の喜び」、「親愛」だそうな。

それにしても甘くてちと酸っぱくて味の濃淡がはっきりしている我が家の蜜柑、どうです、一度お試しになられませんか?

 

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