お初さんは今年米寿になりました。以前よりの筍の大事な患者さんです。五十を優に超えた息子との二人暮らし。周囲を黄金色に輝く稲穂に包まれた、都市化から取り残されたような田園地帯の真っ只中の古びた農家造りの家に棲…

  「Choosing Wisely運動」をご存知ですか?米国内科専門医認定機構財団(ABIM)によって、2011年頃から全米で始められた医療キャンペーンです。このキャンペーンは現在までに全米の71医学会が参加…

  九十三歳になるお母上を看取るべく、三ヶ月間に亘り、兄弟姉妹四人が交代で二十四時間付き添った。いよいよという最後の晩、親戚一同が集まってお母上を見守っていた。そのうち、お襁褓を替える必要が生じたので看護婦さん…

  「慣れねばならず狎れてはならず」 その昔、先輩外科医から教わった言葉です。立派な外科医になるためには、解剖学によく精通し、手術基本手技の習得に万全を期し、突発的な事態が起こったときでも、常に冷静に対応すべく…

  1999年7月10日土曜日、4歳の男の子が兄と一緒に母親に連れられて盆踊り大会に遊びに来ていた。兄弟は綿菓子を買ってもらって食べていたが、母親は、チケットを手に入れるため、兄に「弟を見ていてね」と伝え、その…

  2006年、末期がん患者など7人の人工呼吸器を本人あるいは家族の同意なしに停止、患者を死に至らしめたとして、富山県の市立病院に勤務する50歳の外科部長が取り調べを受けた事件、皆様ご記憶でしょうか。 この事件…

  「死期が迫った患者さんを前にして医師は何を為すべきか」については、消化器癌専門医を目指したときからの大命題です。昨今の医療に係わる事件報道を見るとこの国の医療の行く末が心配でなりません。 たったひとりで県立…

その夜のことでした。筍の家の玄関チャイムが鳴らされました。ドアを開けると、どこぞのご婦人が立っておられます。 「何か御用ですか」 「いつもお世話になります。私は今日先生に診察して頂いた隆雄さんの奥さんの兄弟の子供の従兄弟…

隆雄爺さんが診察にやってきました。もう三十年も前に腰椎椎間板ヘルニアで手術を受けたのですが、術後の経過が思わしくなく、いまでは両方の腕で二本の杖をついて、漸くなんとか自力で歩けるといった状態の爺様です。若い頃、肺結核を患…

「病棟医長として申し上げます。本来なら当大学の外科病棟には末期癌患者さんは入院できないのです。手術を急がねばならないひとたちが沢山待機しておられるのです。関連病院にご紹介するのが常なんです。しかし、小山田さんは診察待ちの…

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