IMG_2350

 待つ程も無く爺さん、やってきました。弟の次郎吉爺さんが付き添いです。

「夜分済みませんねえ。腹痛はもう治ったんですが、かゆうて、痒うて、とても朝まで待っとれんもんですから」

なんともう喘いではおりません。普通の呼吸です。晩酌の名残でしょうか。少し酒臭い息です。

「ヒイッ、ヒーイッ、ピイイーッ、ピイイッ」

今度は次郎吉爺さんの喘ぎです。次郎吉爺さんは重度の肺気腫、普段からまるで海女さんの磯笛のような息遣いをしております。慌てて診療所までやってきたので息苦しくなったのでしょう。こっちのほうがよっぽど重症です。

「せんせっ、こんな夜分に済まんのう、ハアッ、ピイッー、ハアーッ。兄貴はいつも大袈裟だで、ヒイッ、ヒッ、ヒイーッ。朝まで待っときゃ治るだろうにのう、困ったもんだで、フウッ、フッ、フーッ、この兄貴はよう、へエーッ、ヘッ、ヘエーッ」

おとうと爺さんは冷静です。でも喘ぎ喘ぎです。息も絶え絶えと云ったところ。兄貴として心配せんのじゃろか。

 太郎吉爺さんの身体中には確かに蕁麻疹が花盛りです。見るからに痒そうです。そこいらじゅう、引っ搔き傷でズタズタです。でもねえ、あれほど喘ぐようなことではなかろうにねえ。まあ、ご希望通り注射でもして差し上げましょう。いや、大した薬効など無いやつです。お尻に刺された針の痛み、これが効くんですなあ。ここいらの年寄りにはねえ。飲み薬も二日分だけ処方することにしました。いや、この薬は効く筈です。二日もあれば治るでしょう。爺さんの汚ねえ尻に筋注してやりました。

 するとどうですか、たちどころに効くんですな、これが。

「あーあっ、もう楽になってきた。せんせの薬はよう効くで。みんながそう云っとるもんなあ。ああ、これで死なんで済んだよう。おかげさんで」

そんなに早く効くわけない。そんな効き目を持った薬じゃないのにねえ。まあ、さっきの喘ぎから、今度は“よいしょ”です。やりますなあ、太郎吉爺さん。あんたが死ぬときゃ、どんなだろ。

 爺さん二人はあえぎ、喘ぎ、筍医者はあきれ、呆れ。

Write a comment:

*

Your email address will not be published.

お問合せ先        052-689-0900

夏季休暇について


8月9日の発熱外来・PCR検査・抗原検査については受付終了とさせて頂きます。

下記期間中の発熱外来・無料PCR検査やお問合せならびに検査予約については夏季休暇となりますので対応致しかねます。ご理解の程宜しくお願いいたします。

8月10日(水)~8月14日(日)

なお、8月14日(日)17:00以降の申し込みについて翌15日(月)に折返しの電話をさせて頂きます。(8月14日16:59までに頂いた申し込みについてはキャンセルとなりますのでご承知おき下さい。

如来山内科・外科クリニック

This will close in 0 seconds