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エイズは1981年米国で初めて報告されました。男性同性愛者にカリニ肺炎やカポジ肉腫などといった、健常者には通常は見られない日和見感染や悪性腫瘍を併発し、極めて高い死亡率を示す難病です。

その後1983年には、病原体としてレトロウイルスに属するHIVが分離・同定されました。HIVはCD4という細胞膜蛋白質を受容体として細胞に感染する性質があり、細胞性免疫を統御する中枢細胞であるCD4陽性のヘルパーT細胞やマクロファージに感染し、これらを破壊するのです。このため、細胞性免疫の著しい機能低下が起こり、全身性の免疫不全状態が引き起こされ、様々な日和見感染症や日和見腫瘍、中枢神経障害など多彩で重篤な症状を伴うのです。適切な治療が行われなかった場合の予後は発病後二〜三年とされています。

もっとも一般的なHIVの型;HIV-1型は、アフリカ南西部のサルの免疫不全ウイルス(SIV)から突然変異に寄って発展したと考えられています。サルからチンパンジーに、さらにはヒトへと伝播するうちに、チンパンジーあるいはヒト体内のいずれかにおいて、SIVからHIVへと発展したものと考えられています。1930年代のこととする説が有力です。HIV感染は最初はアフリカ南西部のごく一部の人々の間に留まっていたのですが、交通手段の革新により世界中に蔓延するようになったのです。  ヒトへの感染の契機としては主に二つの説が考えられています。ひとつはカットハンター説、いまひとつはポリオワクチン説です。カットハンター説とは猟師が感染チンパンジーの毛皮を剥がしていた際に誤って指を切ってしまい、その傷からHIVウイルスに感染し、この猟師から随時感染が他の人に拡大していったというものです。これに対し、ポリオワクチン説は1950年代後半に使われた小児麻痺を予防するためのポリオワクチンがたまたまHIVに汚染しており、当時積極的に推進されたアフリカ南西部でのワクチン接種を通して、エイズが蔓延したとの推論です。いずれにせよ、現時点であれば遺伝子解析でたちどころにそのHIVの来歴把握できるのですが、1950年代のウイルス学は未だ黎明期であり、当時のワクチンの製造方法も保存方法も甚だ原始的なものであり、HIV汚染の真相は今となっては「薮の中」と云わざるを得ません。  男性同性愛者五名にAIDSが発症したとの最初のエイズ症例報告がなされて、もう四半世紀が過ぎました。この間、世界で9,000万人が感染し、4,000万人が犠牲となりました。いまだエイズは猛威を振るっています。現代の黒死病(ペスト)と呼ばれる所以です。

エイズ問題は単にひとつの治療困難な疾病としての問題のみならず、人種差別と偏見、富の偏在、自然破壊などグローバルな問題として、私たち一人一人が自らのこととして考えてゆくべき課題です。

神が人類に出された宿題です。

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