皆様はプロジェリアという病気をご存知でしょうか。
プロジェリア(早老症)とは、通常の10倍近いスピードで老化する遺伝性疾患です。発現頻度は800万人に1人の割合、全世界でも現在30人ほどの患者さんが確認されているだけの非常に稀な疾患です。
プロジェリアの子供たちは、生後6ヶ月の頃から骨粗鬆症、脱毛症、皮膚の萎縮、動脈硬化といった典型的な老人性疾患を発症し、15歳前後で脳梗塞や心筋梗塞で亡くなります。
早老症を呈する病気は他にも幾種類かが存在し、「ハッチントン・ギルフォード症候群」、「ウェルナー症候群」なども比較的良く知られた早老症です。
ここでお話ししたいのは、早老症の病気についてではありません。プロジェリアの子供たちが持つ深い人生の洞察力についてです。最初にプロジェリアのアシュリーを知ったのは、いまからもう5年ほど前のテレビ番組であったと記憶しております。その番組の中で、アシュリーと同じ病気の3歳年上のボーイフレンドが話す内容に度肝を抜かれたのです。
アシュリーが言います。
「わたしってこんな病気で何て可哀想な・・・なんて思いながら、一生悲しいパーティーなど続けたくない」
ボーイフレンドが答えるのです。
「人生は長さではない。大事なことはどう生きるかだ。自分の命を最大限生きたい」
アシュリーが応えます。
「人生は不満を云うほど悪いもんじゃないの」
たかだか14、5歳の子供がこんな素晴らしい言葉を至極淡々と話すのです。毎日毎日が普通のひとの10倍の早さで過ぎ行くプロジェリアの子供たちが持つこの感受性の素晴らしさ。
「生きること」の達人ではないですか。彼らは自分の有り様以上のものを望んで、不平や不満に苛まれることは決してないのです。自分のあるがままに、いまこの時を精一杯生きている。命の輝きを満喫しているのです。
肉体年齢は優に100歳を越えているアシュリーが、彼女よりも遥かに若々しい母親に甘えるそのあどけなさ。あるいは自分の肉体のほうがとっくに祖母より老いているにも拘わらず、経験者としてその足腰を気遣うその眼差しの優しさ。
彼らは人間とはいかに素晴らしいものであるかを我々に教える伝道者です。
毎日毎日流れ行くこの貴重な時間は、誰にとっても決して永遠に続くものではないのです。生きていることの価値、生かされていることの幸せ、そして、老いていけることへの感謝。
死は恐れるべきものではなく、どう生きたかの総括、そして、永遠の安らぎです。
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