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 腰部脊柱管狭窄症という病気をご存知でしょうか。変形性脊椎症とも呼ばれる、主に高齢者の病気です。足や腰の痛み、間歇性跛行(少し歩くとしびれや痛みで歩けなくなり、暫く休むとまた歩けるといった症状)、排尿後もまだ尿が出きっていない感じとか便秘傾向とかの直腸膀胱障害などが主な症状です。腰の背骨の変形や靱帯が厚くなり、脊髄神経が圧迫されることによって起こる病気です。

 重子婆さんは今年79歳、もう10年以上も前からこの病気に悩まされています。10年前に手術を勧められましたが、どうしても決心がつきませんでした。最初の頃は階段の上り下りが少々難儀で、200mほど歩くと足が痛くなって休むといった症状でしたが、病状は次第に悪化しました。両足の麻痺が進行し、歩くことも立ち上がることも出来なくなりました。排尿も自力では困難で膀胱に管を入れてとらねばなりません。便秘が酷く、いつもお腹が張って苦しくなりました。

 漸くにして手術を受けようという決心がつきました。診察をした医師は浮かぬ顔です。手術に踏み切って神経の圧迫を解除したとしても、果たして神経機能が回復するかどうかは判らないからです。

 でも重子婆さんは先生に頼みました。

「ここまで逃げてたのはみんな自分が悪いんだから。結果が駄目だったとしても仕方がない。どうかお願いします」

 手術は無事に終わりました。ですがやはり歩けません。立ち上がれません。導尿も続きます。手術から一ヶ月が過ぎようというある日、主治医の先生が言われます。

「ここまで待っても神経機能は戻ってきませんね。残念ですが、諦めて頂くより他ありません。退院してご自宅で養生なさいますか」

 直ぐに退院となりました。診療所からさほど遠くない所にお住まいです。ご家族が往診依頼に来られました。ですが診療所には何の情報も届いて居りません。入浴サービスやヘルパーなどの介護サービスも受けなくてはなりません。数日経って病院の主治医より紹介状が届きました。定期的に尿道バルーンの交換をして欲しいとだけの至極簡単な内容でした。

 病院にお勤めの先生方はどうも病院内のことにしか注意が向いていないようです。退院された後はもう無関心と云ってよいようで・・・。退院後の療養も入院医療に劣らず重要です。重子婆さんのような患者さんでは、かかりつけ医、訪問看護師、ケアマネージャー、社会福祉士、ヘルパーなどのメンバーが、退院前にケア会議を開催し、在宅両用の進め方について十分検討して、しっかりとした療養計画を立てる必要があります。

 病診連携が叫ばれています。医療と介護の連携も重要です。建前だけに終わらぬよう、それぞれが注意したいものです。

Category病診連携
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