人生に たったひとつだけ 確かなことがある それは いつか必ず すべてのひとに 死が訪れるということ にも拘らず おおくのひとは 必ず訪れる死について 考えようともしない 汝 死を恐れることなかれ 汝 死を厭うことなかれ…

 隣部落の駐在さんに、とっつぁんからの電話が再々掛かるようになったのは、いまから三年程前からのことでした。 「泥棒にお金盗られた」 「隣の爺がおらの家に毒撒いた」 「裏のばばあがおらのうちに火いつけよった」 「みんなが儂…

   春も間近な或る寒い朝、愛しい女房が卒中であっけなく死んでしまったのです。たった数日のことでした。看病の間さえ無い突然の別れでした。隣組のものたちがほんの申し訳程度に集まっただけの寂しい葬儀でした。川下から呼んだ坊さ…

   歳月はあっという間に過ぎ去ってゆきます。ですが何年経っても生活は楽にはなりませんでした。みいちゃんはお隣のまこちゃんとおままごと遊び。けんちゃんは近所の餓鬼大将らと兵隊さんごっこ。かあちゃんは近所の食堂の洗い場仕事…

  すきま風が吹き込む襤褸アパートの一部屋の、薄汚れた煎餅布団に包まって、いったい幾日が過ぎたことでしょう。今が昼なのか夜なのかさえ定かでなく、饐えた臭いの籠ったこの部屋で、誰にも気付かれずに死んでゆくのも悪くはなかろう…

  今は昔、浅市のとっつぁんがまだ若い頃、とっつぁんには想いを寄せる娘が居りました。山ひとつ向こうの隣部落に住む可愛い娘です。娘もとっつぁんが好きでした。でも内気な浅市は、「嫁にくれろ、嫁に来てくろ」などとは、とてものこ…

 性急すぎる夢追いに 疲れ果てたとて  眠れぬ程の 愚かしさよ  もともとに 大した夢でもなきものを  散じ果てたと嘆くほど 甲斐あるものと思いしか  所詮 おのが身の程は 然程のものと 思い知るべし  夜の永きの 徒然…

  いきるものすべて 宇宙のちっぽけな粒子のひとつ   その形とて束の間の狩衣 その色とて暫しの化粧   しかし消えることはない でも生じることもない   老いを恐れることはない …

   “尊厳死”とは、患者が不治の病でしかも末期になった場合に、自分の意志で無意味な延命治療を拒否し、安らかな人間らしい死を遂げることを指します。すなわち、患者本人の意志による死に方の選択ということが出来ます。 これに対…

通夜の席は賑やかでした。皆がさんざめき笑顔さえときに見られる席に居たたまれず、筍は自室へと戻りました。部屋のドアを閉めた瞬間、涙が溢れ出しました。大声を上げて泣きました。今まで然程の痛手は無いななどと、比較的冷静に自分を…

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