先日の外来でのこと。
3歳の男の子が母親と日本脳炎ワクチン接種に来院。
診察までに母親からよくよく言い聞かされてきたとみえて、
不安げではあるものの気丈に振舞っておりました。

型のごとく全身状態のチェックを終えるまでは良かったのです。
「ぼく大丈夫!」と声高らかに宣言。
でもね、注射シリンジの針を見ちゃうとね。
もう駄目、頑張りもここまで。

嫌がる子どもの上腕を、鬼のような看護師と優しい母親が、
がっちりと固定。
「ちょっと痛いけど我慢しなよ。すぐに終わるからね」と筍。

皮膚表面は針を刺してもペンレステープのおかげでほぼ無痛。
でも薬液が注入されるときには深部痛覚が作動します。
痛みはあるのです。
「痛いよう、痛いよう」と激しく泣きだすおちびさん。

はい待合室で異常反応が出ないか、10分ほどは待機してくださいと看護師。
母親に抱かれ泣き叫びながら診察室をでるその時でした。
「やぶいしゃ!」、おちびさんが叫びました。

筍はあまりのタイミングの良さと、その正確な断言にびっくり。
「わずか数分の診察室滞在で筍をやぶいしゃと見破ったか」と筍。
すると母親が慌てて修正。
「せんせっ、いまのは、やぶいしゃじゃなく、やぶれたといったんです」

「やぶいしゃ」と「やぶれた」
確かに筍にはやぶいしゃと聞こえたんだけれど。
注射の痛みを皮膚が破れたと表現する子の語学力の素晴らしさにただただ脱帽。

それにしてもいまだ藪にもなれない筍が成長して、
「やぶいしゃ」と呼ばれることの栄誉。
そうは容易くないですよね。

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